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  2. 【2016年9月27日】キオスクコンサートの会場となりました

平成28年6月30日、JT生命誌研究館の村田さんから大阪医大ゆかりの方がコンサート会場を捜しており、大阪医大の別館はどうか?とご提案がありました。資料館で調査したところ、主催者の森悠子さんの父君は昭和16年に本学大阪高等医学専門学校のドイツ語の助教授に就任され、同19年には教授となられた方であることがわかりました。当日、私もコンサートの聴衆となる機会を得て、森さんと親しくお話を致しました。森さんご本人は本学附属病院で産声をあげずに誕生し、小島秋教授の蘇生によって今があるとうかがいました。

森さんの豊かな表情と温かいお人柄をもってコンサートのアドレスをいただきました。その中で、別館の階段講堂の音響が素晴らしく、音楽の演奏に最適であると述べておられたことに驚きました。別館の階段講堂は音が響きすぎるため、マイクを用いた講義には向かず、保存事業の中では階段講堂をひとつのディスプレーとして残すことにしました。ところが、森さんによれば、古代ヨーロッパの劇場は演台の真ん中で鉛筆を落としたり、ひそひそ話をしたりすると、最後列の席にまでその音がまるで目の前のことのように届くそうで、この階段講堂もそれに似た音響があるとのことです。加えて、演台でバイオリンを奏でると反響した音が奏者を包み込み、身体の中に染み入ってくるような心地よさがあるのだそうです。
 今回、弦楽の素晴らしい音色を間近で耳にして、そのダイナミックさにひと際感激したことはもちろん、階段講堂の席から観る演奏者は今までに経験した事のない角度で目に入り、バイオリン、ビオラ、チェロのネック上を舞う指がまるで蝶のように見えることにずいぶん新鮮な感動を覚えました。
 登録有形文化財は利用しながら保存することを目的としております。今回のようにその中で新たな発見があったことは喜ばしいことであり、今後もこのヴォ—リーズ建築をご利用いただくことでさらなる発見に繋がることを期待しています。