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  2. 【2017年10月25日】大阪医大のコッホの樹

大阪医大の本部キャンパス北門から南へ向けて入ったキャンパス中ほど左手に、若い医学生たちが主として基礎医学を学ぶ講義実習棟と呼ばれる白い建物があります。その建物の前に2本の木が植えられています。向って右は「ヒポクラテスの木」左は「月桂樹」です。
私は永年この月桂樹を密かに、病原微生物学者として有名なRobert Koch博士の名を冠して「コッホの木」と呼んできました。なぜ私がそう名付けたのかその理由をお話ししたいと思います。
この月桂樹は大阪医科大学医学科29期生(S55年卒)が当時の学長の山中太木博士から譲り受け、彼らの卒業記念として植樹されたものです。木の傍には記念碑が建てられています。
山中博士がこの月桂樹を入手されたのは、北里大学医学部の開設祝いに参上された時の縁によると聞いています。
ご存知のようにKoch博士は炭疽菌、コレラ菌、そして結核菌の発見者として有名なドイツの細菌学者で、博士の弟子たちは多くの病原体を発見し、致死的な感染症をコントロールする基盤を作りました。その中に破傷風菌の純培養に成功した北里柴三郎博士や赤痢菌の発見者である志賀潔博士らがおられます。
1908年(明治41)にKoch博士が北里博士の招待で来日された際に、伝染病研究所に植樹された月桂樹が、その後、北里研究所に移植されました。その月桂樹の一枝を山中博士がもらい受け「系統KKY1号」と名付けて自宅の庭で育苗したのが先ほどの月桂樹で、Koch博士手植え樹の子孫なのです。山中博士は「月桂樹を編んで作った月桂冠は栄光のシンボルであり、優秀な君たちに贈ろう」とこの苗を卒業生達に贈ったのでした。乾燥させローリエとして料理や民間療法に用いられる月桂樹は医科大学に植樹されるにふさわしい樹だと思うのです。

左:「月桂樹」(コッホの木)  右:「ヒポクラテスの木」