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  3. 2023年度 事業報告

Ⅰ. 活動概況

令和5年(2023年)度は、ロシアのウクライナ侵攻が膠着する中、ハマスの攻撃に端を発したイスラエルによるガザ侵攻で中東情勢が不安定化するなど、地域間紛争や国際的な緊張の高まりが顕著な1年でした。これに加えて世界的なエネルギー・食糧危機や欧米を中心としたインフレの長期化などもあって、世界経済は、不安定な状況が続いています。日本国内においては、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴う社会・経済活動の正常化に向けた動きが進み、物価の高騰、労働力不足などの課題は残るものの、株価の上昇や賃上げに向けた動きの加速などにより、景気は穏やかに回復しつつあります。しかしながら、世界経済の不安定要素に加え、甚大な自然災害の発生などによる社会・経済活動への直接的な影響もあり、先行きは依然として予断を許さない状況にあります。
日本の教育研究をめぐる環境では、年度初めに私立学校法改正法案が成立したことを受け、令和7年(2025年)4月の改正私立学校法施行に向けた関連省令・規則の整備などの動きが具体化してきました。各学校法人には、長期的視野に立って法人のガバナンス体制を整備・強化していくことが求められています。また、これに合わせた私立大学ガバナンス・コードの改訂も予定されており、社会からは18歳人口の減少を見据えた、透明・公正かつ健全な大学運営を強く要請されています。
このような環境の下、学校法人大阪医科薬科大学は、大阪医科大学創立100周年記念事業に位置付けられる大学病院全建替え事業を計画どおり推進し、一昨年7月に開院した救命救急センターを含む病院新本館A棟の安定的な運営を行いつつ、昨年9月には病院新本館B棟の建築に着工しました。医師の働き方改革が進む中、大学病院では本年1月には能登半島地震の発生を受け、DMAT(災害派遣医療チーム)を現地へ派遣し、被災者の医療支援にあたるなど、社会還元を行いながら総合医療機関としてポストコロナにおけるスマートな病院と、地域医療の中核となる温かい病院を目指し、社会へ貢献しています。附設医療施設はそれぞれの役目を果たし、特に関西BNCT共同医療センターにおける治療症例数の増加と奏効率の上昇が著しく、大きく発展しました。また、本部キャンパスの耐震化率100%に向けた取り組みとして、新たな研究施設の建築を推進するとともに、長期的な視野に立ったキャンパス用地の整備を強化してきました。社会貢献・SDGs活動については、その成果を社会に発信しつつ、地方自治体や民間企業との連携活動を強化しています。
大阪医科薬科大学は、大学統合3年目を迎え、教育機構、研究機構や学部間協議会など学部間の融合を図る組織や内部質保証体制の整備を終え、学部間連携を強化して、より具体的な取り組みを推進してきました。その成果の一つとして、文部科学省による私立大学等改革総合支援事業で全国で唯一、全ての事業タイプに選定されました。また、コロナ禍で実施できなかった入学時の新入生合同研修を対面で開催した他、入学式や卒業式、クラブ活動や学園祭などの課外活動・イベントもコロナ禍前の規模で実施し、コロナ禍を経た新たな学生生活の充実・発展を期してきました。その他、本年度に公的化された共用試験医学系客観的臨床能力試験(CBT、Pre-CC OSCE)の完遂、令和6年(2024年)度から実施される改訂モデル・コア・カリキュラムに対応した新カリキュラム(医学部・薬学部)の策定、医・薬・看の各国家試験対策の強化等を進めてきました。また大学における研究面では、個々の教員の研究を支援しつつ、各種共同研究や研究所における研究の推進を図り、必要がある場合にはBNCT研究会などの全学研究会を催し本学においてより一層の発展を図ってきました。産学官連携では、その成果が社会実装として結実し高く評価されています。
高槻中学校・高槻高等学校は、平成29年(2017年)度にスタートした共学化が完成し、その卒業生を送り出しました。グローバル教育や高大接続、生徒の進路保証にも一層注力し、「最優の進学校」に向けて、学校を挙げて中高一貫の教育活動を展開しています。

本法人は、中(長)期事業計画及び令和5年(2023年)度事業計画に基づき組織体制、施設整備、財政基盤の強化、教育・研究並びに診療等について以下の取り組みを実施しました。

1.組織体制、施設整備、財政基盤の強化等に関する取組み

(1)組織

・法制度改正等への対応
 ①私立学校法改正法施行への対応
  寄附行為変更検討委員会を令和5年(2023年)9月以降8回開催し、寄附行為変更案及び寄附行為施行規則改正案等について検討を重ねました。
 ②ガバナンス・コードへの対応
  令和5年(2023年)6月に全関係部署が私立大学ガバナンス・コード【第1.1版】に基づく遵守状況を検証し、問題がないことを確認しました。当該検証結果は理事会並びに評議員会に報告され、その後、法人ホームページ上で学内外に情報公開しています。また、令和5年(2023年)度私立学校法改正法を反映した【第2.0版】改訂内容を逐次把握し、堅実な学校法人経営に向けた検証体制を整えています。
・効果的な事務組織の構築
 事業所間異動の活発化
  事務職員の特性やキャリアを踏まえた事業所間異動を活発に実施しました。
・学部・学科の編成見直し
 新学部の設置検討
  学部・学科の編成見直しについては継続検討します。新学部の設置については環境などを考慮して当面状況を見守る方針としています。
・各機構による学部連環体制の推進
 機構運営体制の定着化
  学部間協議会の下に、教育・研究・学生生活支援・国際交流・入試に関する組織体として機構、センターを整備しました。毎月の会議に加え年報を編纂する等情報交換、課題解決に注力しており、全学的な大学のマネジメント体制として定着しています。
・各種センター整備
 ①保健管理センター再編、②図書館の情報センター化
  保健管理センターの再編は継続して検討を進めます。
  図書館の情報センター化については、図書館の将来像を考慮して新名称案を検討し、来年度に改称する予定です。

(2)人事

・働き方改革の推進
 時短計画の遂行
  令和6年(2024年)4月施行の医師の働き方改革に備えて特例水準(B水準、連携B水準、C-1水準)の指定を大阪府内で最初に受けることができました。今後は全医師がA水準(年960時間以下)に収まるように時短計画を進めていきます。
・人材育成計画の見直し
 DX人材育成注力
  SD基本計画における階層別人材育成教育プログラムの内容を見直し、DX人材育成については「RPAプロジェクト」による職員の教育を開始しました。
・人事制度の一部見直し
 退職金制度見直し
  退職金制度の見直しに着手しました。また、企業型確定拠出年金(DC)の令和6年(2024年)4月導入に向けて準備を進めました。

(3)施設整備

・耐震化率100%計画の加速
 ①実験動物センター、②第2研究館、第3研究館、③その他整備(木造管理棟等)
  実験動物センター、第2研究館(主に法医解剖)は、第1研究館として、本学キャンパスの旧学生文化部室と職員厚生会館の跡地に令和7年(2025年)6月末の竣工予定で新築することが決まりました。
・キャンパス整備構想
 薬学部キャンパス(東キャンパス)構想
  法人内に薬学部移転推進委員会を、その下に東キャンパス基本構想検討部会と東キャンパス土地整備推進部会をそれぞれ設置しました。
・病院新本館B棟建築
 B棟開院に向けた建築計画の推進及び院内体制の整備
  病院新本館B棟建築工事は、計画どおり順調に進んでおり、令和7年(2025年)5月30日に竣工予定です。
・施設の整備
 薬学部C棟補修
  計画の見直しに伴い、C棟補修工事は取り止めました。

(4)財務・募金推進

・外部資金獲得の強化
 補助金、受託事業収入等
  私立大学等改革総合支援事業については、国内の大学で唯一全タイプを採択されました。
・建築資金調達計画の作成
 病院新本館B棟建築計画の見直しと資金調達の具体化
  病院新本館B棟と第1研究館の建築計画の進展に合わせて、私学事業団と調整の上、資金調達の手続きを開始しました。
・法制度等への対応
 電子帳簿保存法及びインボイス制度への対応
  学内への周知を徹底するとともに必要な規程の制定を行い、適切に対応することができました。

(5)ICT・DX(Digital Transformation)

・各業務のデジタル化推進
 効率化・合理化の一層の促進
  文書管理のシステム運用を開始し、複数部署で文書情報の共有を図りました。また、会議の開催頻度見直しやメール審議の実施を推進しました。
・情報セキリティ対策強化
 研修・訓練の充実
  情報セキュリティ研修を資料スライドと動画を併用し実施しました。標的型メール攻撃訓練も実施し、報告率の向上が見られました。
・ICT環境整備と利活用推進
 スマートフォン活用
  グループウェアの閲覧などを実施しました。
・電子カルテ更改対応
 電子カルテ更改(令和7年(2025年))準備
  国の電子カルテ標準化政策など、今後の展開を踏まえ、電子カルテ更改時期の検討を行いました。
・教学システム(LMS)更改準備
 ①各種証明書の電子化、②教学システム(LMS)の高度化
  学修歴証明のデジタル化など学習管理システムの統合と高度化に着手しました。
・教学サポートシステムの充実
 ①能力の見える化対応、②学びの多様化対応
  令和5年(2023年)度特別補助については、成長力強化に貢献する質の高い取り組み「DXによる教育の質的転換支援」をもとに、教育機構会議で検討しています。

(6)リスクマネジメント

・リスクマネジメント委員会の活動
 リスク評価とリスク対応の深化
  「リスクマネジメント基本規則」に則り委員会を年2回開催し、本法人(本学)におけるリスクの抽出、分析、再評価を行い、令和5年(2023年)度「リスクアセスメント評価一覧表」を作成しました。特にリスクが高い地震などの自然災害については、委員会の中で具体的な対応方策について検討しました。
・危機対応
 BCPの見直し
  法人、法人各部署、病院、大学/中学校・高等学校における危機対応及びBCPの更新作業を行い、ホームページに反映しました。
・サイバーセキュリティ対策
 サイバー攻撃に対するリスク管理体制の検討・構築
  電子カルテシステムにオフラインでのバックアップシステムを構築し、システムダウン時でも診療継続できる仕組みを導入しました。

(7)社会貢献・SDGs(Sustainable Development Goals)

・法人内外における社会貢献・SDGs活動の活性化、自治体、民間企業、NPO等との連携強化
  令和4年(2022年)4月に設置した社会貢献・SDGs推進室を中心として教育・研究・医療/診療を通じた社会貢献・SDGs活動をより積極的に推進するとともに、様々な活動を取り纏めたサステナビリティ活動冊子(第4版/和英訳)を令和6年(2024年)3月に発行しました。
 また、「誰ひとり取り残さない」理念の実践例として、「BNCT研究・治療」や「LD指導・訓練」の推進、超少子・高齢化社会を見据えた「へき地医療支援」や「リカレント教育」の充実、企業や自治体、他大学とのシナジー効果と付加価値を生み出す「共創」の開始などの活動を活発化させています。
・キャンパス全体の省エネルギー活動強化
 中央エネルギー棟の有効活用
  省エネルギー推進規程に基づき、エネルギー管理者とエネルギー管理企画推進者がエネルギー推進委員会に参加し、法人の消費するエネルギー使用量に関して全キャンパスの電気・都市ガス・水道の使用状況を確認して報告書を作成提出しています。さらにエネルギー推進委員会で定める削減数値目標に収めるよう、設備及び機械を運用管理しています。

(8)広報

・Web広報・プロモーションの推進
 ①病院新本館グランドオープンに向けた広報対応
  Webサイトや道路標識案内等、病院新本館グランドオープンを踏まえた広報を検討しました。
 ②ブランディング見直し
  Webなどによる研究活動の情報発信強化などを行いました。
  病院広報ではホームページ・広報誌ともに診療科を跨いだ「チーム医療」の取り組みを特集として掲載しました。
  「大学病院ならではの診療科の枠を超えた高度な医療の提供」は他院との差別化や当院の優位性のアピールに寄与します。

2.教育・研究に関する取組み

大阪医科薬科大学

(1)内部質保証(IR含む)
 ・教員・学生ポートフォリオの活用・整備

  3学部とも授業を担当する専任教員等に対し、ティーチング・ポートフォリオの作成を導入しています。教員からの意見や提言を教育改善に役立てています。
 ・内部質保証の推進
  内部質保証のための「方針」と「手続き」について、大学統合後の現況を踏まえ、見直しを行いました。
  教育研究の内部質保証体制とその稼働状況を検証するために学部間協議会の下に教育研究内部質保証評価会議を発足させ、令和5年(2023年)6月に第1回、令和6年(2024年)1月に第2回の会議を開催し、それぞれ、令和3年(2021年)度分と令和4年(2022年)度分の検証を行いました。結果は学部間協議会に報告の後、本学ホームページにて公表しています。
 ・IR機能の拡充
  令和5年(2023年)9月に第3回教学IRセミナーを開催し、全国の国公私立大学、専門学校、高校などから前年を大きく上回る54校100名に参加いただきました。また、季刊のIRだよりをIR室ホームページに掲載し、IR室の活動を内外に発信しています。

(2)教学
▶学部
 ・教育の充実(大学設置基準改正への対応含む)
  ①三つのポリシーに基づいた教学マネジメントの確立と検証
   IR室の主導で教育機構と連携し毎年作成している「教育年報」では、前年度の振り返りとそれに基づいた課題の抽出を行っています。各学部カリキュラムポリシーの見直しも適宜行っており、教育機構会議でも議題にあげ共有しています。
  ②国家試験:合格率の高位安定
   【令和5年(2023年)度結果】
   3学部の国家試験の結果は以下のとおりでした。
   ・第118回医師国家試験:新卒97.3%、前年比+3.8%
   ・第109回薬剤師国家試験:新卒89.5%、前年比+2.2%
   ・第113回看護師国家試験:新卒100%
    第110回保健師国家試験:新卒100%
    第107回助産師国家試験:新卒100%
  ③モデル・コア・カリキュラム改訂への対応
   医学部、薬学部では、令和4年(2022年)度改訂版のモデル・コア・カリキュラムに準拠したカリキュラムを令和6年(2024年)度より施行する予定です。看護学部では令和8年(2026年)度新入生からモデル・コア・カリキュラムが導入される見込みです。
  ④多職種連携教育の推進
   「教育機構」の下に位置付けられている「多職種連携カリキュラム委員会」主導で令和5年(2023年)度も「医療人マインド」「医療と専門職」「多職種連携論−医療倫理」「多職種連携論−医療安全」の3学部合同授業を実施しました。
  ⑤共用試験:CBT、Pre-CC OSCEの公的化対応
   令和5年(2023年)度より公的化された共用試験について、安全、安心な環境で実施することができました。
   Pre-CC OSCEについては、認定評価者資格が必要となるため、評価にあたる教員全員の資格取得を促進しました。併せて課題漏洩等に完全に対応するための2会場実施を行い、厳格化に対応した試験実施体制で臨み、共用試験実施評価機構より高評価を受けました。
  ⑥臨床実習:臨床及び臨地実習の推進
   医学教育モデル・コア・カリキュラム改訂を受け、指定された診療科において連続3週間以上の実習が行えるよう、コア クリニカル・クラークシップのコース改訂を行いました。
  ⑦データサイエンス:カリキュラムの編成の高度化と自己点検・評価
   本学の3学部共通「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」は、令和4年(2022年)8月24日付で文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」に認定されました。プログラム修了者には学修歴証明としてオープンバッジを発行しています。
  ⑧情報関連科目の強化及びガイダンスの充実
   「情報関連科目及びガイダンスを通じたICTメディアリテラシーの向上と情報モラル強化」として、文部科学省 高等教育局 専門教育課からの「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて(周知)」、一般社団法人日本私立大学連盟からの「大学教育における生成AIの活用に向けたチェックリスト」、他大学の方針等を参考に、「教育活動における生成AIの取り扱いについて」を策定しました。背景・理由も記載し、何故この方針が必要なのかも明確にしています。
  ⑨入学前教育導入
   令和4年(2022年)度より医学部公募型推薦制度で早期に入学が決定した受験生に対する入学前教育を目的として、高大接続センターが稼働しています。
  ⑩FD活動の充実
   令和4年(2022年)度にFD実施方針を教育機構会議で策定し、各学部で必要なFDについては当該学部のFD規程等に従って開催しています。
  ⑪学部生交流活発化
   単位互換・認定を基本とした学部生交流プログラムとして、「多職種連携プログラム」「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」の充実を図っています。また、自由科目である「インタラクティブ・イングリッシュ」は令和4年(2022年)度より3学部共通科目として開講し継続しています。
 ・学生生活支援の充実
  ①厚生補導の促進
   厚生補導として、課外活動(クラブ活動など)への支援を行いました。また、学生の安全・安心のために薬物乱用、人権擁護などの各種啓発活動としての研修やメンタルヘルスに関するオンデマンド配信、学部の学生へのパンフレット配布などを行いました。
  ②学生の財政的支援
   医学部では、医学部学生への奨学金として、日本学生支援機構、小野奨学会等の外部団体の奨学金に加え、医学部独自の奨学金として大阪医科薬科大学医学部奨学金、仁泉会奨学金、鈎奨学基金、四方朋子記念奨学基金の給付及び貸与を行いました。
   薬学部では、学部独自奨学金(特待奨学金、一般奨学金、特別奨学金)を設けており、継続して学生への支援を行いました。
   看護学部では、2〜4年生を対象とした給付奨学金において経済的事由を第一に変更し、家計急変奨学金においても、より広い対象者への貸与を可能とするために、申請要件について経済的事由を優先した規程改正に着手しました。
 ・国際化の推進
  ①国際プログラムの構築
   薬学部が実施していたカナダ・バンクーバーサマープログラムを、3学部合同のプログラムとして採用しました。令和5年(2023年)度は8月21日〜28日に開催され薬学部8名、看護学部2名が参加しました。
  ②国際化に向けたカリキュラム整備
   医学部の臨床実習では、従来2週間を1クールとして留学生を受け入れていましたが、国際情勢の不安定化に対応し、クールの途中からでも受け入れ可能な体制を整備しました。
  ③協定校との交流プログラム促進
   ベルギーのトマスモア応用科学大学との国際交流協定締結準備を進めており、令和6年(2024年)度初めには締結完了の予定です。本学では初めてヨーロッパの大学との協定締結となります。
  ④3学部共通科目の充実
   3学部共通の自由科目「インタラクティブ・イングリッシュⅠ、Ⅱ」の内容充実を進めています。また、医学部で令和6年(2024年)度から自由科目「グローバル・スタディーズ」を開設し、他学部への展開を検討しています。
  ⑤留学生の安全管理強化
   海外派遣の学生に対するサービスとして、日本アイラック危機管理支援システム「アイサーチ」を導入しました。

▶大学院
 ・体制の強化
  ①大学院設置基準改正への対応
   看護キャリアサポートセンターにおいて、リカレント教育促進のため大学院授業の一部聴講(エキスパートHOMEナース)及び履修証明プログラムを実施しました。
  ②学位論文関連データの管理
   博士論文の機関リポジトリへの登録・公開については、医学・看護学研究科においても令和5年(2023年)度から体制が整い、令和4年(2022年)度の学位授与者以降、3研究科全てにおいて行われるようになりました。
 ・大学院教育(医学研究科)
  ①社会人大学院生の研究の改善
   医学研究科修士課程では、社会人大学院生の研究を継続的にフォローアップするため、オンラインでの指導機会を増加させました。
  ②社会貢献
   令和5年(2023年)に選定された「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン」において、患者さんやその家族も参加する様々なセミナーを開催しました。
  ③リカレント教育
   医学研究科修士課程の「医療科学コース」と「SDGs/SDHコース」が厚生労働省から一般教育訓練講座の指定を受け、令和6年(2024年)度入学生より修士課程の社会人大学院生に教育訓練給付金が支給されることとなりました。
  ④志願者の拡大と入学者確保
   令和6年(2024年)度に開講予定の「医療統計学」を専攻する大学院生が5名、入学試験に合格しました。これにより博士課程への令和6年(2024年)度入学者を42名確保することができました。
 ・大学院教育(薬学研究科)
  ①志願者確保の強化
   志願者確保の強化に努めた結果、令和6年(2024年)度入試において、薬学専攻博士課程3名、薬科学専攻博士後期課程1名、薬科学専攻博士前期課程1名の入学者を確保しました。
  ②学生生活支援の充実
   R.A制度、T.A制度の規程を見直し、大学院生の処遇の改善を図りました。
  ③グローバル教育の展開
   令和5年(2023年)度に入学した薬科学専攻博士前期課程外国人留学生に対して、英語による授業やプレゼンテーションを展開しました。
  ④社会人学生の学びの環境整備
   社会人学生に対し、夜間、土曜日に授業を開講しました。また、長期履修制度についても周知しました。
 ・大学院教育(看護学研究科)
  カリキュラムの点検
   専門看護師(CNS)教育課程の更新申請を行ってカリキュラムのブラッシュアップを図り、小児看護・慢性看護・精神看護の各分野において引き続き高度実践看護師教育課程として認定されました。
(3)DX(教学)〈再掲〉
 ・教学システム(LMS)更改準備

  その他
   学修歴証明のデジタル化など学習管理システムの統合と高度化に着手しました。
(4)組織(教学)〈再掲〉
 ・センター整備
  図書館の情報センター化については、図書館の将来像を考慮して新名称案を検討し、来年度に改称する予定です。
(5)入試制度
 ・入学試験制度改革

  入試制度の多様化
   令和6年(2024年)度入学者選抜では、医学部で募集定員10名の公募制推薦入試(専願制)を新設し、実施しました。また、看護学部では募集定員10名の公募制推薦入試(専願制)、募集定員5名の指定校制推薦入試(専願制)、募集定員2名の大学入学共通テスト利用選抜(後期)をそれぞれ新設し、実施しました。
(6)研究
 ・研究推進
  ①研究環境整備
   全学的な実験環境安全管理体制及び規程を整備し、相互に各学部の実験室の安全管理状況の巡視を実施しました。
  ②海外研究者との国際共同研究推進
   コロナ禍が明け海外との往来が活発化し、海外研究機関との共同研究が進んでいます。
  ③研究施設の共用化対応
   研究設備・機器共用システム規程を策定し、外部機関等への研究設備・機器共用システムの運用が開始しました。
  ④研究データマネジメントの推進
   研究データマネジメントポリシーを策定し、医学・薬学各研究科における学位論文に対し、研究データマネジメントのトライアルを実施しました。次年度は看護学研究科において実施予定です。
 ・研究支援
  ①外部資金獲得
   研究シーズ&ニーズ集の構成を抜本的に再構築し、第8版を発行しました。また、研究成果の社会還元として、上市1件、特許権実施等は4件でした。
  ②研究不正対策
   本学独自で研究公正推進を目的とした研究実施届の提出率が医学部は90%、薬学部・看護学部では100%に達しました。
  ③研究者のサポート体制
   本学研究ブランディングを構築し大型競争的研究資金を獲得するため、3学部融合共同研究に対する学内助成制度を新たに設け、令和6年(2024年)度から公募する予定です。
 ・研究機関
  ①小児高次脳機能研究所(LDセンター)の充実
   令和5年(2023年)度も、限局性学習症/学習障害の診断及び合理的配慮に沿った学習支援方法を求めて新規受診希望者数は、年間約400名を堅持しました。また、Web配信での講演会(有料・期間限定)を年間50回ハイブリッドで開催しました。講演会参加者は延べ10,773名(昨年度実績6,400名)となり、講演会開始以来初めて10,000名を超えました。今後も、唯一無二のLDの総合拠点として診療・研究活動を継続いたします。
  ②BNCT共同臨床研究所の充実
   BNCT共同臨床研究所(関西BNCT共同医療センター)では治験と特定臨床研究の活性化により適応拡大を目指し、当施設の付加価値と収益向上に向けて以下の取り組みを行いました。
   1)BNCT共同臨床研究所
    ・研究者受入体制の推進
     BNCTに関わる研究者、医師、学生など国内外問わず、施設見学並びに実習依頼などに対応しています。
また、BNCT発展に資する学外研究者との共同研究・共同利用の促進を進めています。
   2)関西BNCT共同医療センター
    ・医師主導治験の推進
     再発高悪性度髄膜腫を対象としたBNCT治療システムを活用した医師主導治験を令和元年(2019年)度より開始し、令和4年(2022年)度に目標症例数を達成しており、引き続き治療後の経過観察とデータ解析を進めています。

高槻中学校・高槻高等学校

(1)教育の充実
 ・高大接続の強化

  高大連携事業(医学部実習・最先端医学教室・高大接続課題実習・思春期教室・地域医療講演会・基礎薬学講座・サマーサイエンスプログラム・大阪医科薬科大学学部説明会)が活発に行われ、高校生が大学レベルの教育研究に触れる機会を多く得ることができました。また、指定校推薦枠を利用して、大阪医科薬科大学医学部へ2名が進学しました。
 ・グローバル教育充実
  US.デュアル・ディプロマ・プログラム2期目の実施、ケンブリッジ英語カリキュラムの高校導入、アメリカ・カナダへのターム留学、台湾、パラオへの実地研修、台湾の延平高級中学校との学校間交流など充実したグローバルな取り組みを実施することができました。また、国際教育コーディネーターを設置し、新たな海外交流の機会創出を積極的に検討しています。
 ・共学の安定化
  共学化完成の昨年度から始まった新たなステージの2年目となりました。進路指導中央会議、進路指導部を中心に進学実績向上に繋がる分析・対策を実施し、共学2期生の76期生も75期生に続き、立派な進学実績を残してくれました。生徒の進路保証、進学実績の向上を実現し、名実ともに「最優の進学校」へと歩みを進めています。
 ・SSHの仕上げ
  第2期SSHの研究開発課題(ⅰ)探究学習のカリキュラム開発(ⅱ)高大連携事業(ⅲ)海外研修について研究開発課題を成就することができました。

3.診療

(1)超スマート医療の実現

 ・電子化と業務効率の推進、オンライン化とペーパーレス化の推進、電子カルテ更改準備〈再掲〉

  スマートフォンを利用したポケットチャート(RFID認証対応)システムの導入を全病棟に行い看護認証業務の効率化、ペーパーレス化を実施しました。  令和7年(2025年)の電子カルテ更改は、国の電子カルテ標準化政策対応等も鑑み延期となりましたが、令和7年(2025年)B棟開院に併せスーパースマートホスピタル(SSH)実現のため、外来患者誘導システム及びRFID検体情報統括管理システムの導入を進めています。

(2)診療体制の充実

 ・診療組織の活性化、人材活用
  診療体制の充実として、上部消化器内視鏡オープン検査の開始、機能改善外科チームの始動、胆膵フレックスラインの開設などを行いました。また、温かい病院づくりを目標に掲げて接遇研修、外部講師による講演会を実施して組織の活性化を図りました。人材活用及び医師の働き方改革への対応として、特定行為研修を行い、令和5年(2023年)度は、救急領域パッケージ1名、外科術後病棟管理領域パッケージ1名の看護師2名を養成しました。

(3)患者増加促進

 ・広報強化
  企画・広報課との連携、協力により病院広報を活発化させており、定期広報誌に加えて臨時号の発行や病院ホームページの随時更新によるリアルタイムな情報発信等で広報機能を強化しました。
 ・連携の推進
  コロナ禍で実施できていなかった「連携強化のつどい」等各種イベントを本格的に再開し、後送医療機関を含む更なる医療機関訪問による顔の見える連携推進、入退院支援クラウド「CAREBOOK」導入によるスムーズな転院調整、「連携登録医療機関制度」の加入促進など連携強化を図っています。
 ・インバウンド対応
  仲介業者からの外国人患者受入依頼があれば対応しており、紹介数もコロナ流行前に戻りつつあります。

(4)人材育成・活性化

 ・先端技術人材育成
  先端技術人材育成は先進的な医療機器を扱える人材の増加を目的に研修を充実しています。
 ・看護師の確保と人材育成
  看護師の確保については引き続き養成機関との連携を深め予定どおり人員を確保しました。人材育成については「温かい病院づくり」を目指し研修を企画しています。
 ・医師の働き方改革の推進
  医師の働き方改革についてはB水準、連携B水準及びC-1水準について大阪府の認可が得られました。また、医師の労働時間短縮計画を策定するとともに勤怠管理の体制を整備しています。

(5)病院新本館B棟建築〈再掲〉


 ・B棟開院に向けた建築計画の推進及び院内体制の整備
  病院新本館B棟建築工事は、計画どおり順調に進んでおり、令和7年(2025年)5月30日に竣工予定です。

(6)BNCT医療の提供


 ・BNCTの強化
  令和2年(2020年)より再発頭頸部癌を対象としたBNCT保険診療が開始され、累計290件(2023年度は140件「2022年度対比+55件」)と治療件数が増加しました。
  BNCTの普及・啓発のためのセミナーや研究会を関係メーカーと連携して積極的に実施した結果、地域を問わず問い合わせや紹介が昨年度より6割程度増加しました。
  適応拡大に向けて再発膠芽腫に関する新たな医師主導治験の準備を開始しました。
 ・PET診療の増加
  運用の見直し等を積極的に実施しました。
  後期相での撮像を基本的に止め、前期相のみの撮像とし、予約枠数を10枠/日に増やしました。

4.地域連携

(1)三島南病院の充実〜ケアミックス病院としての連携強化〜


 ・安定的経営体質の構築、介護事業との連携
  新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、コロナ専用病棟及び休止病棟を従前の一般急性期病棟、及び地域包括ケア病棟として運用を再開しました。
  通常運用に復帰後も、新型コロナウイルス患者の入院の受け入れを継続するとともに、安全かつ効率的な病院運営が実現できるよう取り組みました。

(2)健康科学クリニックの運営の安定化


 ・健康科学クリニックでの健診収入の維持と高質な検査人員体制の確保
  健診収入実績については順調に推移しています。
  検査人員は中央検査部からの応援体制が構築され、次年度に向けても更なる協力の下、エコー検査実施技師の育成にも力を入れていく予定です。

(3)地域医療連携ネットワークの推進


 ・訪問看護ステーションの安定化、関係機関との連携強化
  運営においては人材確保、人材育成(訪問看護認定看護師、特定行為修了看護師等の配置)、人生会議(ACP)実践に取り組み、質の高い訪問看護を提供しています。
  地域の教育ステーションとしての活動、行政、看護協会、訪問看護ステーション協会、介護事業者協議会などの委員会や会議に参画し、地域の関係機関との連携強化を図ることができ、地域連携の基盤構築にも繋げています。

Ⅱ.財務の概要(令和5年(2023年)度決算の概要)

法人全体の決算概要 【別表1−1、1−2、1−3】

(1)事業活動収支計算書

教育活動収入は、医療収入は12億円増加しましたが、経常費等補助金が28億円減少し、571億円となりました。一方、教育活動支出は、病院新本館A棟関連経費が減少しましたが、人件費が7億円増加と、医療収入増加に伴う医療材料費が8億円増加したことにより563億円となりました。この結果、教育活動収支差額は19億円減益の8億円となりました。
教育活動外収支差額は、受取利息・配当金の増加により33百万円増益の67百万円となりました。
特別収支差額は、現物寄付は増加しましたが、施設設備補助金が減少したため17億円減益の2億円となりました。
基本金組入前当年度収支差額は、35億円減益の11億円となりました。

(2)資金収支計算書

収入の部と支出の部の合計はともに40億円の減少となりました。翌年度繰越支払資金は77百万円減少の157億円となりました。

(3)貸借対照表

資産の部合計は14億円減少し、1,278億円となりました。負債の部合計は25億円減少し、395億円となりました。
結果、純資産の部合計は、11億円増加の883億円となりました。

大阪医科薬科大学の事業活動収支計算書(前年度比)【別表2】

(1)教育活動収支

① 学生生徒等納付金
  医学部学費引下げの学年進行及び薬学部在学生数の減少により110百万円減少しました。
② 手数料
  前年度並みの297百万円となりました。
③ 寄付金
  特別寄付の増加により62百万円増加しました。
④ 経常費等補助金
  コロナ関連の補助金の減少により2,760百万円減少しました。
⑤ 付随事業収入
  受託事業収入の減少により29百万円減少しました。
⑥ 医療収入
  大学病院では、病院新本館A棟及び救命救急センターの通年稼働により入院収入が大幅に増加しました。関西BNCT共同医療センターは、治療件数増加により外来収入が増加しましたが、三島南病院は、入院収入が減少し、全体では1,241百万円増加しました。
⑦ 雑収入
  退職金財団交付金の増加等により391百万円増加しました。
⑧ 人件費
  教職員の処遇改善や退職給与引当金繰入額の増加により650百万円増加しました。
⑨ 教育研究経費
  病院新本館A棟建築に関連した消耗品費、修繕費は減少しましたが、医療収入増加に伴う医療材料費の増加等に
より98百万円増加しました。
⑩ 管理経費
  公租公課は増加しましたが、修繕費及び減価償却額の減少により54百万円減少しました。
⑪ 教育活動収支差額
  1,893百万円減少し703百万円となりました。

(2)教育活動外収支差額

受取利息・配当金の増加により29百万円増加し、44百万円となりました。

(3)特別収支差額

施設設備補助金の減少により1,654百万円減少し、202百万円となりました。

(4)基本金組入前当年度収支差額

3,518百万円減少し949百万円となりました。

高槻中学校・高槻高等学校の事業活動収支計算書(前年度比)【別表3】

(1)教育活動収支

① 学生生徒等納付金
  授業料の増加、入学金手続者の増加により6百万円増加しました。
② 手数料
  中学入学試験志願者数増加により3百万円増加しました。
③ 寄付金
  前年度並みの5百万円となりました。
④ 経常費等補助金
  経常費補助金の増加、物価高騰対策一時支援金の受給により8百万円増加しました。
⑤ 付随事業収入
  前年度並みの9百万円となりました。
⑥ 雑収入
  前年度並みの3百万円となりました。
⑦ 人件費
  退職給与引当金繰入額は2百万円減少しましたが、教員人件費は2百万円、職員人件費は3百万円増加したことにより3百万円増加しました。
⑧ 教育研究経費
  光熱水費3百万円、学生厚生費2百万円減少しましたが、修繕費22百万円、消耗品費7百万円、旅費交通費5百万円の増加により27百万円増加しました。
⑨ 管理経費
  前年度並みの75百万円となりました。
⑩ 教育活動収支差額
  15百万円減少し122百万円となりました。

(2)教育活動外収支差額

受取利息・配当金の増加により4百万円増加し、23百万円となりました。

(3)特別収支差額

前年度並みとなりました。

(4)基本金組入前当年度収支差額

11百万円減少し146百万円となりました。

令和5年(2023年)度 事業活動収支計算書(前年対比) 【法人全体】【別表1−1】

(単位:百万円)

令和5年(2023年)度 資金収支計算書(前年対比) 【法人全体】【別表1−2】

(単位:百万円)

令和5年(2023年)度 貸借対照表(前年対比) 【法人全体】【別表1−3】

(単位:百万円)

令和5年(2023年)度 事業活動収支計算書(前年対比) 【大阪医科薬科大学】【別表2】

(単位:百万円)

令和5年(2023年)度 事業活動収支計算書(前年対比) 【高槻中学校・高槻高等学校】【別表3】

(単位:百万円)

財産目録 【学校法人 大阪医科薬科大学】(2024年3月31日現在)

(単位:円)

事業活動収入と事業活動支出の推移

(単位:百万円)

事業活動支出の内訳

(単位:百万円)

人件費及び委託費

(単位:百万円)

施設・設備投資額

(単位:百万円)

金融資産と借入金

(単位:百万円)

純資産

(単位:百万円)