使命

大阪医科薬科大学歴史資料館は、登録有形文化財である別館を保存するとともに、学校法人大阪医科大学の前身である財団法人大阪高等医学専門学校の設立理念の根底にあるものを顕彰し、医学・医療の在り方や法人の設置する教育施設の使命を時宜に応じて検討する場を提供することを使命として平成18年6月1日に別館に設置されました。歴史資料館では、各種展示を行うとともに資料の収集・整理を行います。
私たちの理念にある「国際的視野」に立てばいかなる地域にも密着できることが重要であると認識し、当館ではこの地域での公開型の教育施設として、より多くの方々にご利用いただきたいと考えています。

事業内容

大阪医科薬科大学歴史資料館はその使命を達成するために、以下の「場」を提供できるよう事業を行います。
  1. 法人が設置する教育施設の教育に関る場(医学教育研究の講義など)
  2. 医学・医療あるいは財団法人大阪高等医学専門学校および学校法人大阪医科大学が設置した教育施設とその周辺に関する歴史的資料の収集・整理・保存・研究の場
  3. 医学・医療の歴史を分析し、将来の医学・医療のあり方を研究する場
  4. 地域住民、地域医師会、同窓生との対話の場(市民参加型の研究会や説明会など)
  5. 地域住民への医学・医療に関する情報提供の場(公開講座や小中学生の理科離れ予防の展示など)
  6. その他、館長が必要と認めるもの。

国の登録有形文化財

本学は昭和2年に開校し、昭和5年に竣工した学舎群は、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880年米国カンザス州で生まれ、1941年日本帰化、1964年永眠)により設計されたものです。その後、学舎の建替えが進められ、創立当時の建物は「別館」を残すのみとなりました。
この「別館」がイスラム様式のアーチやアラベスク装飾などを用いた個性的な意匠と地域の歴史的建築であることが評価され、平成15年7月1日に高槻市内では初めて国の有形文化財に登録されました。

専門家による評価

2007年に修復され、再生された『別館』は大阪高等医学専門学校が当地で開校されて間もない昭和3年(1928年)に講堂として建てられたものです。『別館』は時計台を備えていた本館(昭和4年)、解剖館(昭和4年)とともにヴォーリズ建築事務所による原案を基に建てられました。
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964)は大正昭和初期を通じて日本で活躍した米国人建築家で、代表的な建築には赤煉瓦の大阪教会、著名なミッションスクールの建築や、心斎橋の大丸百貨店などを残しています。またヴォーリズはメンソレータムで知られた近江兄弟社の事業や詩人としての活躍など、幅広いユニークな活動が知られています。
本建物の特色は階段教室と講堂を3階建て箱型の建物にまとめた合理的な計画と、インドサラセン様式の装飾を付した個性豊かな意匠にあります。ヴォーリズは医学教育機関のこの校舎の設計にあたり古代医学の源といわれるインドにヒントを得たのかもしれません。ところで本格的なインドの建築は石造による華麗な様式で知られていますが、この建築は優しい壁仕上げと部分的なタイル張りの表現にヴォーリズの建築の特色がみられます。
建築より78年を迎えた2006年に着手された修復工事は詳細な調査に基く意匠の復原と活用に対応する整備がなされた近代建築再生の適例として注目されるものです。

山形政昭
大阪芸術大学芸術学部建築学科教授