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  3. 高リスク心血管疾患患者におけるObicetrapibの有効性と安全性を確認
2025年11月27日

大阪医科薬科大学

大阪医科薬科大学 医学部 内科学Ⅲ教室(循環器センター)の斯波真理子(Mariko Harada-Shiba)特務教授らが参画した国際共同研究「BROADWAY試験(NCT05142722)」の結果が、米国の医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』に2025年7月3日号で掲載されました。本研究は、新規CETP阻害薬「Obicetrapib」の安全性と脂質低下効果を検証した多国籍二重盲検プラセボ対照試験です。

論文タイトル:“Safety and Efficacy of Obicetrapib in Patients at High Cardiovascular Risk”

著者:S.J. Nicholls, A.J. Nelson, M. Ditmarsch, J.J.P. Kastelein, C.M. Ballantyne, K.K. Ray, A.M. Navar, S.E. Nissen, M. Harada‑Shiba, D.L. Curcio, A. Neild, D. Kling, A. Hsieh, J. Butters, B.A. Ference, U. Laufs, M. Banach, R. Mehran, A.L. Catapano, Y. Huo, M. Szarek, V. Balinskaite, and M.H. Davidson, for the BROADWAY Investigators*
掲載誌: The New England Journal of Medicine 2025;393:51–61
(オンライン掲載日:2025年7月3日)
DOI:10.1056/NEJMoa2415820

研究の背景

低密度リポタンパクコレステロール(LDL-C)の低下は、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の予防において最も確立された治療戦略の一つです。しかし、最大耐容量のスタチン療法やエゼチミブ、PCSK9阻害薬を併用しても、多くの高リスク患者でガイドライン推奨値(LDL-C <55 mg/dL)に到達できていません。Obicetrapibは高選択的コレステリルエステル転送タンパク(CETP)阻害薬であり、従来のCETP阻害薬とは異なり高い水溶性を有し、脂肪組織への蓄積が少ないことが特徴です。
 

研究概要

ROADWAY試験は、動脈硬化性心血管疾患または家族性高コレステロール血症(HeFH)を有する2,530例を対象に、最大耐容量の脂質低下療法下でObicetrapib(10 mg/日)またはプラセボを365日間投与し、LDL-C低下効果と安全性を評価しました。
対象者:平均年齢65歳、女性34%、HeFH患者17%、ASCVD患者89%
治療薬:Obicetrapib 10 mg/日 または プラセボ(2:1の割合で割付)
主要評価項目:投与84日目のLDL-C変化率

主な結果

LDL-Cは29.9%低下(Obicetrapib群) vs 2.7%上昇(プラセボ群)
→ 両群差:−32.6%ポイント(P<0.001)
半数以上(51%)の患者がLDL-C <55 mg/dLに到達
アポリポタンパクB:−18.9%、non-HDL-C:−29.4%、Lp(a):−33.5%低下
有害事象発現率は両群で同程度(Obicetrapib群 59.7%、プラセボ群 60.8%)

本試験では、Obicetrapib投与によって顕著な脂質低下効果が認められ、安全性にも大きな懸念は示されませんでした

意義と展望

本研究は、スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬に続く新たな経口脂質低下薬の可能性を示す重要な成果です。Obicetrapibは、既存治療で十分な効果が得られない患者に対して、補完的かつ経口投与可能な選択肢となることが期待されます。

現在、長期心血管アウトカム試験「PREVAIL試験(NCT05202509)」が進行中であり、臨床的イベント抑制効果の検証が注目されています。

本件に関するお問い合わせ

大阪医科薬科大学
総務部 企画・広報課
Email: hojin-koho@ompu.ac.jp