Ⅰ. 事業計画
1.はじめに
令和4年(2022年)度は、ロシアのウクライナ侵攻とこれに対する米、EU等による対ロシア経済制裁に伴うエネルギー・食糧危機やサプライチェーンの脆弱化などにより、世界的に大きな経済的混乱が起きました。また、世界中で深刻さを増す気候変動や新型コロナ感染症の蔓延、経済的格差の拡大などの問題がクローズアップされました。国内においても、コロナ禍の長期化による経済活動の停滞が続き、これに加えて円安の進行と物価の急激な上昇が経済の先行きに不透明感を与えています。
このような環境下にあって、本法人では7月に病院新本館A棟が開院するとともに、救命救急センターが順調に稼働し、地域医療の中核として大きな存在感を発揮しています。大阪医科薬科大学は、大学統合2年目を迎え、機構運営や学部間協議会を通じて3学部の融合が一段と進み、学部横断型の多職種連携教育の対面実施や3学部同時開催による卒業式、入学式などが行われました。高槻中学校・高等学校は、男女共学の完成年度を迎え、「最優の進学校」として大きな飛躍を遂げることができました。
令和5年度は、現行の中(長)期計画の完成年度である令和7年度に向けて、法人全体として付加価値を意識しつつ、様々な取り組みを進めていく必要があります。医療面では、超スマート医療の実現に向け、附設医療施設の充実とともに、病院新本館B棟の建築を中心とした施設・設備の整備を進め、さらなる機能強化を図っていきます。大阪医科薬科大学は、大学設置基準の改正を受けて教育研究実施組織の拡大、専門教育の強化、図書館の情報センター化、入試制度改革などを進めます。また、個々の教員の特色ある研究に加え、産学連携研究の強化と外部資金の有効活用等を通じて新たな特性を生み出すとともに各研究所の一層の活性化を図る ことにより価値の創造を行っていきます。高槻中学校・高等学校は、次世代を担う人物育成型の私立中学校・高等学校の確立を目指し様々な試みを実施していきます。
本法人は、今年度も堅実/スマート経営を行い、Society5.0のもと Super Smart 教育・研究・医療を実践し、さらなる成長を図ってまいります。
2.主たる事業項目
[1]施設整備、組織、人事、財政・募金推進等に関する取り組み
(1)施設整備
・耐震化率100%計画の加速
① 実験動物センター、 ② 研究2号館、3号館、 ③ その他整備(木造管理棟等)
・ キャンパス整備構想
薬学部キャンパス (東キャンパス)構想
本部キャンパス:総合研究棟1階、2階再編
・病院新本館 B 棟建築
B棟開院に向けた建築計画の推進および院内体制の整備
・施設の整備
薬学部C棟補修
(2)組織
・法制度改正等への対応
① 私立学校法改正法施行への対応、② ガバナンス・コードへの対応
・ 効果的な事務組織の構築
事業所間異動の活発化
・学部・学科の編成見直し
新学部の設置検討
・各機構による学部連環体制の推進
機構運営体制の定着化
・各種センター整備
① 保健管理センター再編、 ② 図書館の情報センター化
(3)人事
・働き方改革の推進
時短計画の遂行
・人材育成計画の見直し
DX人材育成注力
・人事制度の一部見直し
退職金制度見直し
(4)財務・募金推進
・外部資金獲得の強化
補助金、受託事業収入等
・建築資金調達計画の作成
病院新本館B棟建築計画の見直しと資金調達の具体化
・法制度等への対応
電子帳簿保存法及びインボイス制度への対応
(5)ICT ・ DX
・各業務のデジタル化推進
効率化・合理化の一層の促進
・情報セキュリティ対策強化
研修・訓練の充実
・ ICT環境整備と利活用推進
スマートフォン活用
・電子カルテ更改対応
電子カルテ更改(2025年)準備
・教学システム(LMS)更改準備
① 各種証明書の電子化、② 教学システム(LMS)利用の拡大
・教学サポートシステムの充実
① 能力の見える化対応、② 学びの多様化対応
(6)リスクマネジメント
・ リスクマネジメント委員会の活動
リスク評価とリスク対応の深化
・危機対応
BCPの見直し
・サイバーセキュリティ対策
サイバー攻撃に対するリスク管理体制の検討・構築
(7)社会貢献・ SDGs
・法人内外における社会貢献・SDGs活動の活性化
自治体、民間企業、NPO等との連携強化
・キャンパス全体の省エネルギー活動強化
中央エネルギー棟の有効活用
(8)広 報
・ Web広報・プロモーションの推進
① 病院新本館グランドオープンに向けた広報対応 、 ② ブランディング見直し
[2]教育・研究に関する取り組み
(1)大阪医科薬科大学
1)内部質保証(IR含む)
・ 教員・学生ポートフォリオの活用
教員・学生ポートフォリオの整備
・内部質保証の推進
内部質保証体制の構築と運用
・ IR機能の拡充
IR機能の内外への発信
2)教学
▶学部
・教育の充実 (大学設置基準改正への対応含む)
①三つのポリシーに基づいた教学マネジメントの確立と検証
②国家試験:合格率の高位安定
③モデル・コアカリキュラム改訂への対応
④多職種連携教育の推進
⑤共用試験:CBT、Pre-CC OSCEの公的化対応
⑥臨床実習:臨床及び臨地実習の推進
⑦データサイエンス:カリキュラムの編成の高度化と自己点検・評価
⑧ 情報関連科目の強化及びガイダンスの充実
⑨入学前教育導入
⑩FD活動の充実
⑪学部生交流活発化
・学生生活支援の充実
①厚生補導の促進
②学生の財政的支援
・国際化の推進
①国際プログラムの構築
②国際化に向けたカリキュラム整備
③協定校との交流プログラム促進
④3学部共通科目の充実
⑤ 留学生の安全管理強化
⑥人材交流促進
▶大学院
・体制の強化
① 大学院設置基準改正への対応
② 学位論文関連データの管理
・大学院教育(医学研究科)
①社会人大学院生の研究の改善
②社会貢献
③リカレント教育
④志願者の拡大と入学者確保
・大学院教育(薬学研究科)
①志願者確保の強化
②学生生活支援の充実
③グローバル教育の展開
④社会人学生の学びの環境整備
・大学院教育(看護学研究科)
①カリキュラムの点検
②志願者確保と広報活動の強化
③学生生活支援の充実
3)DX (教学)<再掲>
・教学システム(LMS)更改準備
・その他
4)組織(教学)<再掲>
・センター整備
5)入試制度
・入学試験制度改革
入試制度の多様化
6)研究
・研究推進
①研究環境整備
② 海外研究者との国際共同研究推進
③ 研究施設の共用化対応
④研究データマネジメントの推進
・研究支援
①外部資金獲得
②研究不正対策
③研究者のサポート体制
・研究機関
①小児高次脳機能研究所(LDセンター)の充実
②BNCT共同臨床研究所の充実
(2) 高槻中学校・高槻高等学校
・教育の充実
①高大接続の強化、②グローバル教育充実、③共学の安定化、④SSHの仕上げ
[3]診療
(1)超スマート医療の実現DX
①電子化と業務効率の推進、②オンライン化とペーパーレス化の推進、③電子カルテ更改準備<再掲>
(2)診療体制の充実
①診療組織の活性化、②人材活用
(3)患者増加促進
①広報強化、②連携の推進、③インバウンド対応
(4)人材育成・活性化
①先端技術人材育成、②看護師の確保と人材育成、③医師の働き方改革の推進
(5)病院新本館B棟建築<再掲>
B棟開院に向けた建築計画の推進および院内体制の整備
(6)BNCT医療の提供
①BNCTの強化、②PET診療の増加
[4]地域連携
(1)三島南病院の充実 ~ケアミックス病院としての連携強化〜
①安定的経営体質の構築、②介護事業との連携
(2)健康科学クリニック運営の安定化
健康科学クリニックでの検診収入の維持と高質な検査人員体制の確保
(3)地域医療連携ネットワークの推進
①訪問看護ステーションの安定化、②訪問看護ステーションと関係機関との連携強化、③地域連携の基盤構築
Ⅱ. 予算編成方針と主な支出
[1]予算の編成方針
①超スマート医療の実践、及び特色ある教育研究環境の整備に必要な投資に予算を配分します。
②抜本的な業務効率化につながるデジタル化推進、施設等各種要件の充足及び職員の配置適正化に対し予算を配分します。
③支出を上回る収入増加や固定費の削減が見込める投資に予算を配分します。
<基本的事項>
・上記以外の新規予算については、原則、既存の経常費予算削減により原資を捻出します。部署単位で対応が困難な場合は部門単位で原資を捻出します。
・外部資金(各種補助金等)を積極的に獲得します。
・寄付金の募集・獲得活動を一層強化します。
Ⅲ. 各部門の予算概要
1. 大阪医科薬科大学(前年予算比)
令和4(2022)年度に病院新本館A棟が完成し、同時に救命救急センターも設置されました。令和5(2023)年度は、病院新本館B棟の建設に着手すると共に、令和10(2028)年度の耐震化率100%達成に向けた取り組みとして、新研究棟(仮称)建築プロジェクトを開始します。これらの計画を推進するために、施設関係支出として1,646百万円を予算計上しました。また、病院のDX推進を目的としたペーパーレスシステムや病床管理システムの導入、3学部の教務システムの統合等を含め設備関係支出として1,181百万円を予算計上しました。
[1]教育活動収支
①学生生徒等納付金
医学部学納金の引下げ(教育充実費)等により、72百万円の減額としました。
②手数料
前年と同程度としました。
③寄付金
特別寄付金(教育環境整備のための募金)の増加により、13百万円の増額としました。
④経常費等補助金
各種補助金の減少を見込み、1,387百万円の減額としました。
⑤付随事業収入
受託事業の減少により49百万円の減額としました。
⑥医療収入
大学病院は、稼働率の改善と入院単価及び外来単価の上昇、救命救急センターの通年稼働による増加、三島南病院、健康科学クリニック、BNCTも各々増加し、医療収入総額は917百万円の増額としました。
⑦雑収入
退職金財団交付金収入の増加により、183百万円の増額としました。
⑧人件費
実績見込をベースに定期昇給・処遇改善を加味し、737百万円の増額としました。
⑨教育研究経費
燃料費、物価高騰により467百万円増額の28,246百万円としました。
⑩管理経費
36百万円減額の2,508百万円としました。
⑪教育活動収支差額
医療収入は増加しますが、人件費の増加、物価高騰に伴う経費の増加の影響が大きく、1,562百万円減少の810百万円となりました。
[2]教育活動外収支及び経常収支差額
借入金利息が増えるため、教育活動外収支差額は12百万円の減少、経常収支差額は1,574百万円の減少となりました。
[3]特別収支及び基本金組入前当年度収支差額
特別収支差額は、1,702百万円の減少となりました。なお、予備費は例年通りの320百万円とし、結果として基本金組入前当年度収支差額は499百万円となりました。
[4]資金収支
収入の部と支出の部の合計は共に10,105百万円の減少となりました。翌年度繰越支払資金は467百万円減少の15,425百万円となりました。
2.高槻中学校・高等学校(前年予算比)
[1]教育活動収支
①学生生徒等納付金
授業料は前年と同程度、入学金は3百万円の増額としました。
②手数料
入学検定料は受験者数増加の実績から4百万円の増額としました。
③寄付金
寄付金は募集パンフレットの刷新、募集方法の見直しにより、4百万円の増額としました。
④経常費等補助金
大阪府経常費補助金など実績を反映し、13百万円の増額としました。
⑤付随事業・収益事業収入
前年と同程度としました。
⑥雑収入
前年と同程度としました。
⑦人件費
人員構成から試算し、教員人件費は7百万円の減額、職員人件費は5百万円の増額、退職金関連費用を含めた人件費全体では、9百万円の減額としました。
⑧教育研究経費
過剰予算となっている部分を全体的に見直し、12百万円の減額としました。
⑨管理経費
実績を反映し、5百万円の減額としました。
⑩教育活動収支差額
50百万円増加の90百万円となりました。
[2]教育活動外収支及び経常収支差額
経常収支差額は55百万円増額し、113百万円となりました。
[3]特別収支及び基本金組入前当年度収支差額
特別収支は前年と同程度とし、予備費は前年と同額の20百万円を計上し、基本金組入前当年度収支差額は93百万円となりました。
[4]資金収支
収入の部と支出の部の合計は共に79百万円の増加となりました。翌年度繰越支払資金は290百万円減少の935百万円となりました。
3.法人全体の予算概要
事業活動収支予算の教育活動収入は58,163百万円、教育活動支出は57,263百万円となり、教育活動収支差額は900百万円となりました。基本金組入前当年度収支差額は592百万円、基本金組入後の当年度収支差額は2,741百万円の支出超過となる予算編成です。
なお、資金収支予算は、収入の部、支出の部共に77,055百万円となり翌年度繰越支払資金は、16,437百万円を確保する見込みです。