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  3. 2019年度 事業計画及び予算概要

Ⅰ. 事業計画

1.はじめに

2018年の世界情勢は、米中の貿易摩擦が激化したことにより、中国経済の成長は急速に低迷しました。また、欧州では英国のEU離脱、フランスの大統領支持率の急低下、イタリアのポピュリスト連立政権によるEUとの対立など不安材料が山積し、ロシアのプーチン政権の「多極化世界」の発言も相重なり、2019年度も世界情勢は混迷が予想されます。
日本の社会情勢は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催や2025年日本国際博覧会の大阪開催決定などにより、建築費が上昇することも懸念されます。他方、「大阪府北部地震(6月)」、「平成30年7月豪雨(7月)」、「台風21号(9月)」、更には「高槻市内大規模施設停電(2019年1月)」の被災経験や南海トラフ地震の予知の観点から、食料の備蓄などによる災害への備えの強化や建物の耐震性確保が重要な課題となっています。
2018年はスポーツ界における不祥事、一部の医学部での不正入試問題、大手自動車メーカーのガバナンス体制の形骸化など、組織のコンプライアンスやガバナンスが注目される年でしたが、2019年は天皇陛下のご退位により、およそ30年続いた平成の元号が改元されるなど、時代の流れが大きく変わろうとする年でもあります。
2019年の日本経済は、米中経済の減速や半導体需要の調整を背景に輸出は減少する一方、雇用・所得環境の改善持続や消費税増税前の駆け込み需要から内需の堅調が見込まれ、前年比+0.7%と潜在成長率並みの成長が予測されています。
医療情勢に目を向けますと、超少子超高齢化などによる疾病構造の変化や医療保険制度の安定化を目指す改革が進み、診療における収支構造が大きく変化しています。また、2018年は診療報酬・薬価基準のダブル改定が行われ、財源面でも前回改定を上回る薬価部分への切り込みが明確となるとともに、特定機能病院への医療資源の集中が促進され、より迅速な対応をしなければ、本法人の医療収益が圧迫されることになると予想されます。加えて、2019年10月に消費税増税に伴う改定が行われるため注目しなければなりません。
他方、政府の「働き方改革実現会議」の開催以降、政府が掲げる労働生産性の向上を目的とした「一億総活躍社会」の実現に向けて、「医師の働き方改革」と「学校における働き方改革」に対しても注目が集まっています。
本法人でも診療業務に携わる医師及び教育や研究を主たる業務とする教員の滞留時間の把握や勤務実態調査を行い、調査結果を踏まえた労働時間の適正化の推進を順次実施しているところで、今後更に男女共同参画の推進と併せて、労働環境と労働生産性の向上が求められています。また、ゲノム創薬やAI診断などの科学技術の世界的な進歩は著しく、医療への応用は急速に進んでおり、働き方改革とあわせて近未来の医療は大きく変化するものと思われます。
学校法人制度をめぐる環境においては、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会並びに学校法人制度改善検討小委員会による「学校法人制度の改善方策について(2019年1月7日)」が示され、学校法人の自律的なガバナンスの改善・強化、学校法人の情報公開の推進、学校法人の経営の強化等について、法改正を進める一方で、文部科学大臣所轄法人に対してガバナンスを改善・強化するよう提言がなされ、学校法人の自律的なガバナンスの改善・強化が求められています。
本法人の目的は「国際的視野に立った教育、研究或いは良質な医療の実践をとおして、創造性と人間性豊かで人類の福祉と文化の発展に貢献する人材を育成する」ことであり、「医学・薬学・看護学の教育研究或いはそれらの実践をとおした次世代を担う良質な医療人の育成並びに魅力ある中等教育の実践をとおしたグローバル人材の育成と、高度安全な医療を地域社会に提供する」ことが使命です。これらを達成するため、自らの学びによるインテグリティ(誠実性)を涵養した教職員が、更にSSD(Staff Self-Development)によって「治療/教育的自我(医/教育の倫理を包含した概念で、医療者・(医師)/教師の品性)」を修養し、教育研究の向上と高度で安全良質な医療の実践をとおして、本法人が設置する学校や病院などを持続的に発展させ、社会の公器としての成長を目指して邁進していきます。
そのために、「学校法人大阪医科薬科大学 中(長)期事業計画 2019-2025」に基づき、2019年度法人スローガンを「Society5.0の浸透・実践」と定め、病院新本館建築や大学統合を始めとした各施策への展開を図り、その実践の場やシステムの形成とそこで学び働く人々の成長を支え、Society5.0(超スマート社会)において安全高質なSuper Smart教育・研究・医療を実現するため、以下の事業を進めます。

2.主たる事業項目

[1]組織体制、施設整備、財政基盤の強化等に関する取組み

(1)組織体制

① 法人合併のさらなる深化(組織の強化)
・大学統合の推進
・本部機能の強化(法人事務局、法人広報、企画等)
・ITシステムの統合(情報、人事、財務)による事務の効率化
・情報セキュリティ対策への取組み
 > 法人施設への統合サイバーセキュリティ対策(一元管理体制の実現)
 > 情報システム監査導入に向けた取組み
② 人事
・新人事制度の具体化
・働き方改革の推進
 > 教職員の時間外労働短縮
 > 勤怠管理(出退勤の打刻、有給休暇の管理)のシステム化
 > 女性医師支援のさらなる推進
・ダイバーシティへの取組み
 > 障がい者雇用促進チームの設立
 > 女性の活躍推進

(2)施設整備

・病院新本館建築事業(基本設計から実施設計へ)
 > 共同利用会館の移転
 > 病棟の移転
 > エネルギーセンター構想の具体化
 > 三島救命救急センターの移設準備・検討
・本部キャンパス整備構想(用地確保含む)
・高槻中学校・高等学校の第Ⅲ期工事の推進
・耐震補強工事、建て替え工事
・弁天駐車場の代替施設確保
・看護師マンション借上契約
・本部キャンパス内道路のバリアフリー化(道路整備等)

(3)財政基盤の強化

・病院医療事業の強化
・外部資金獲得の強化支援
・募金事業の強化(遺贈の仕組みづくり含む)
・支出の抑制(各種保守契約等の見直しによる経常費の効果的配分等)

(4)その他

① 三次救急体制の整備・検討
・人事採用計画の推進
② 周年事業
・健康科学クリニック開設10周年

[2]教育・研究に関する取組み

(1)大学統合の推進

(2)教職協働

(3)高大接続改革への持続的な対応(高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革)

(4)研究の活性化と外部資金の獲得

・私立大学等改革総合支援事業への取組み
・私立大学研究ブランディング事業の遂行

(5)教員評価制度の実施(大阪医科大学)

(6)情報リテラシー教育の徹底

(7)実践に基づく多職種連携教育の強化

(8)医学教育の充実(大阪医科大学)

・クリニカルクラークシップの強化
・医師国家試験合格率の高位安定化
・教育の国際化(留学生数の増加、単位互換の充実)
・大学評価(大学基準協会)の受審準備
・医学研究科医科学専攻(修士課程)の新設

(9)薬学教育の充実(大阪薬科大学)

・新カリキュラムに対応した教員組織の整備・充実
・大学院に夜間・休日開講と長期履修制度を導入
・薬学教育モデル・コアカリキュラムに対応した実務実習の導入
・薬剤師認定制度認証機構の認証取得

(10)看護学教育の充実(大阪医科大学)

・カリキュラム評価と構築
・国際交流の推進
・アクティブ・ラーニングの推進
・高度実践看護師養成(老年看護専門看護師、在宅看護専門看護師、ナースプラクティショナー)
・障がいのある学生の支援
・地域包括ケアの推進(在宅看護支援事業)

(11)中等教育の充実(高槻中学校・高槻高等学校)

・進学校に求められる教育力の強化
・大阪医科大学・大阪薬科大学他との高大連携・接続の推進
・高大接続改革及び新学習指導要領に対応した新しい教育内容の実践
・SSH事業(二期目申請中)・SGH事業(4年目)の推進

(12)保健学部(仮称:各種医療系技師及び事務員等の育成)設置についての検討開始

(13)小児高次脳機能研究所の充実によるLDセンター事業の強化

(14)BNCT共同臨床研究所の活性化によるBNCT医療の実用化推進

[3]医療に関する取組み

(1)超スマート医療への挑戦

・健康科学クリニックにおける予防医学の推進(健康寿命の延伸、生活習慣病患者の減少)
・患者満足度の高い医療の実現(先制医療、個別化医療、再生医療、地域包括医療)
・遠隔診療の検討
・がん医療総合センターの強化
・がんゲノム医療連携病院としての機能強化
・スーパースマートホスピタル実現に向けた医療情報システムの整備(サイバーセキュリティの確保含む)

(2)安全で質の高い医療の実践

・安全管理体制の永続性の確保
・良識のある人間性豊かな医療人の育成
・医師・薬剤師・看護師などのチーム医療の実践
・患者満足度向上へ向けた取組みの実践
・タスクシフティングの推進
・保険診療指標モニタリング体制の強化

(3)特定機能病院の体制強化

・開設者、管理者に求められるガバナンス体制の強化
・高度医療の開発と安全な提供体制の強化

(4)ケアミックス医療の機能強化~三島南病院の充実を図る~

(5)地域医療連携ネットワークの推進

・三島医療圏地域包括ケアシステムの推進
・三島南病院、地域医療包括センター、健康科学クリニック、関西BNCT共同医療センターとの一体化
・地域医療機関との連携強化

Ⅱ. 各部門の予算概要

1.大阪医科大学

[1]教育活動収支

① 学生生徒等納付金
医学部大学院生の増員により、前年より7百万円の増額を見込んでいる。
② 手数料
前年より、7百万円の減額を見込んでいる。
③ 寄付金
創立100周年記念事業募金により、前年より60百万円増額を見込んでいる。
④ 経常費等補助金
圧縮率の改善等による経常費補助金の増加により、前年より28百万円増額を見込んでいる。
⑤ 付随事業収入
共同研究収入で20百万円の増加、受託事業収入で16百万円の増加により、付随事業収入としては前年より37
百万円の増額を見込んでいる。
⑥ 医療収入
附属病院の外来収入は、2018年度の増加トレンドが継続することを想定し、前年より1,084百万円増加が予測され、入院収入は、消費税の損税補填等による診療報酬臨時改定に加え、在院日数の短縮と病床稼働率改善により前年より1,261百万円の増加を見込んでいる。
三島南病院の外来収入は、外来単価増から前年より3百万円の増加、入院収入は、病床稼働率の改善と入院単価増から前年より44百万円の増加を見込んでいる。
⑦ 雑収入
退職金財団交付金が前年より20百万円減少し、5号館の解体に伴うテナント店舗移動による賃貸面積減少により家賃が前年より14百万円減少する結果、雑収入は前年より41百万円の減額を見込んでいる。
⑧ 人件費
教員人件費は77百万円の増加、職員人件費も207百万円の増加、役員報酬も24百万円の増加となり、人件費の総額は前年より279百万円の増額を見込んでいる。
⑨ 教育研究経費
教育研究経費は、21,298百万円と前年より2,573百万円の増額を見込んでいる。中でも医療材料費が大幅に増加しており、医療収入の増加と高額薬品の使用量の増加及び値引き率の縮小に伴い、前年より1,496百万円の増額を見込んでいる。減価償却額は、関西BNCT共同医療センターの減価償却額が127百万円増加し、前年より333百万円の増額を見込んでいる。委託費は、前年より364百万円の増額を見込んでいる。新規に発生する委託費のうち主なものは、BNCTサイクロトロン保守管理費73百万円、教務システムの改修29百万円、帳票西暦化対応費用20百万円である。修繕費は、三島センター薬局跡地の賃借に伴う改装工事費等により前年より91百万円の増額を見込んでいる。
⑩ 管理経費
管理経費は、2,406百万円と前年より109百万円の減額を見込む。修繕費は、本館・図書館棟外壁タイルの補修工事と立体駐車場防水工事の完了により83百万円の減額を見込んでいる。光熱水費は、法人割引の値引き率が拡大したことにより前年より44百万円の減額を見込んでいる。
以上の結果、教育活動収支差額は842百万円を見込んでいる。

[2]教育活動外収支及び経常収支差額

教育活動外収入と教育活動外支出は前年並み、経常収支差額は799百万円を見込んでいる。

[3]特別収支及び基本金組入前当年度収支差額

特別収入は、前年より158百万円の減額、特別支出は前年より8百万円の増額を見込んでいる。予備費を300百万円とし、基本金組入前当年度収支差額は515百万円となり前年より363百万円の減少を見込んでいる。

[4]まとめ

資金収支に関しては、施設関係支出として1,322百万円を見込み、その内1,150百万円は病院新本館建替えに関連する改修工事等の案件で、他に看護師寮の購入を計画している。また、設備関係支出は1,247百万円と前年より70百万円の増額を見込んでいる。これらの投資を賄うため、900百万円の施設設備拡充資産の残高減少を見込んでいる。結果、翌年度繰越支払資金については8,528百万円を見込んでいる。

2.大阪薬科大学

[1]教育活動収支

① 学生生徒等納付金
薬学部新入生は入学定員の294名で試算し、前年予算より71百万円の減額を見込んでいる。
② 手数料
入学検定料は、前年実績額等をベースに試算し、前年予算より2百万円の増加、その他の手数料収入は、本学がセンター試験実施当番校でないことを踏まえ、3百万円減少し、手数料は総額では前年予算より1百万円の減額を見込んでいる。
③ 経常費等補助金
国庫補助金は前年実績額をベースに試算し、前年予算より2百万円、経常費等補助金の総額では1百万円の減額を見込んでいる。
④ 雑収入
退職金財団交付金等の増加に伴い、前年予算より2百万円の増額を見込んでいる。
⑤ 人件費
教員人件費は前年実績額をベースに試算し、前年予算より6百万円の減額、職員人件費は、派遣職員の直接雇用による契約職員採用により59百万円の増額、退職給与引当金繰入額は定年退職による退職金期末要支給額の増加に伴い、7百万円の増額となり、人件費の総額では60百万円の増額を見込んでいる。
⑥ 教育研究経費
学内システム運用維持費、図書館システム更新費・保守費、研究棟・講義実習棟等共用部改修工事等の費用を計上し、前年予算より38百万円の増額を見込んでいる。
⑦ 管理経費
事務局ファイルサーバー構築費・保守費、震災用品、人事コンサルティング業務委託等の費用を計上し、前年予算より20百万円の増額を見込んでいる。
教育活動収支差額は106百万円と前年より184百万円の減少を見込んでいる。

[2]教育活動外収支及び経常収支差額

教育活動外収支は、第3号基本金引当資産運用収入の増加に伴い、前年予算より5百万円の増額を見込んでいる。
経常収支差額は147百万円と前年より179百万円の減少を見込んでいる。

[3]特別収支及び基本金組入前当年度収支差額

特別収入は、大型共同機器購入費に係る施設設備補助金等を計上したが、申請金額が前年予算より減少し、7百万円の減額を見込んでいる。特別支出は、図書の除却額を計上し、前年予算より45百万円の減額を見込んでいる。
基本金組入前当年度収支差額は168百万円と前年より141百万円の減少を見込んでいる。

[4]まとめ

2019年度予算について、基本金組入前当年度収支差額は168百万円、当年度収支差額はマイナス137百万円を見込んでいる。前年予算と比較すると、学生生徒等納付金の収入減、人件費並びに教育研究経費の支出増が主な要因となり、基本金組入前当年度収支差額は141百万円、当年度収支差額は224百万円の減額を見込んでいる。
資金収支に関しては、前年予算と比べて特段大きな変動はなく、翌年度繰越金は3,441百万円を見込んでいる。

3.高槻中学校・高等学校

[1]教育活動収支

① 学生生徒等納付金
学年進行による授業料増額改定や入学金の増加により前年予算より24百万円の増額を見込んでいる。
② 寄付金
前年予算と同程度を見込んでいる。
③ 手数料
前年予算と同程度を見込んでいる。
④ 経常費等補助金
国庫補助金、地方公共団体補助金ともに、前年予算と同程度を見込んでいる。
⑤ 付随事業収入
前年予算と同程度を見込んでいる。
⑥ 雑収入
退職金財団交付金は、退職予定者から交付金額を試算し、前年予算より13百万円の増額を見込んでいる。
⑦ 人件費
教員人件費は8百万円の増額、職員人件費3百万円の減額を見込んでいる。退職金関連費用を含めた人件費全体では、前年予算より15百万円の増額を見込んでいる。
⑧ 教育研究経費
中学校舎やグラウンド防球ネットの改修費用として24百万円、図書館運営の外部委託費用として20百万円を見込んでいる。減価償却額については、図書館棟完成の影響により12百万円の増加を見込んでいる。また、建物撤去費用の減額により、全体としては前年予算より56百万円の減額を見込んでいる。
⑨ 管理経費
支出実績を参考に、前年予算と同程度を見込んでいる。

[2]教育活動外収支及び経常収支差額

教育活動収支差額は18百万円となり、前年予算より80百万円の増額を見込んでいる。また、経常収支差額は27百万円となり、前年予算より87百万円の増額を見込んでいる。

[3]特別収支及び基本金組入前当年度収支差額

特別収支は不動産処分差額の減額を見込んだことにより、前年予算より150百万円改善している。
基本金組入前当年度収支差額は6百万円を見込んでいる。

[4]まとめ

2019年度予算の基本金組入前当年度収支差額は、前年予算より237百万円増額する見込みである。収支が改善した大きな要因は、前年予算では、特殊要因として本館取壊による建物撤去費用を89百万、資産処分差額を151百万円見込んでいたことによる。
なお、資金収支については中学校舎の改修や体育館の空調新設などを予定しているため、翌年度繰越支払資金は141百万円減少する見込みである。

4.法人全体

事業活動収支予算の教育活動収入は50,443百万円、教育活動支出は49,478百万円となり、教育活動収支差額は965百万円を見込んでいる。基本金組入前当年度収支差額は688百万円、基本金を組入れた後の当年度収支差額は、5,498百万円の支出超過となる予算編成である。
なお、資金収支予算は収入の部、支出の部ともに69,283百万円となり翌年度繰越支払資金は14,275百万円を確保する見込みである。