活動事例紹介

認知症の人にも安心安全な身体治療の環境を【認知症ケアチーム】

総務省の推計によれば、わが国の65歳以上の高齢者人口は3,617万人(2020年9月15日現在)、高齢化率は28.7%となり、過去最高の更新が続いています。高齢化の進展とともに認知症の人の数も増加し、2025年には約700万人になると予想されています。
2015年1月には「認知症の人の意思が尊重され、出来る限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」を目指し、厚生労働省と関係府省庁との共同で認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が策定されました。医療機関では、認知症を合併した患者さんの身体治療の対応が広く求められています。
認知症の人にとって医療機関、特に急性期病院への入院は大きなストレスです。例えば、自分が何のためにどこにいるのか分からず不安や恐怖を感じたり、検査や治療の意味が理解できずに混乱したりすることがあります。また、認知症の人の中には、発熱や痛みなどの身体変化を判断し言語的に表現することが困難な人が多くいます。せん妄を合併することも多く、認知症患者さんへの看護提供頻度は高い傾向にあります。しかし、急性期病院には認知症の人の行動・心理症状への不十分な対応や、安全を守るために身体拘束がなされている等の課題があり、医療従事者の認知症への対応力向上が求められています。

当院では2019年に認知症ケア委員会と認知症ケアチームを設置しました。認知症ケアチーム(以下、チームと略記)は、精神科医、認知症看護認定看護師、精神看護専門看護師、精神保健福祉士、薬剤師、理学療法士、作業療法士、医事課事務等の多職種で構成されており、チームが各病棟で実施される認知症ケアをサポートすることで、認知症の人の入院治療の効果を高め、円滑な社会復帰に導くことを目指しています。
具体的には、週1回各病棟をラウンドして病棟における認知症ケアの実施状況を把握し、困っていることや疑問に対して病棟看護師の相談に応じ助言しています(2021年現在、認知症ケア・精神科リエゾン合同チームでラウンドを実施)。また、職員対象の研修を定期的に開催し、認知症ケアに関する啓発活動を行っています。
病院看護部では、各病棟から1名ずつ選出された看護師(認知症ケアリンクナース)が病棟の認知症ケアの中心となって活動しています。認知症ケアチームは、ラウンドや会議を通じて病棟責任者や認知症ケアリンクナースと連携を図り、認知症ケアの質の向上を目指しています。

認知症ケア・精神科リエゾン合同チーム

病棟ラウンド