活動事例紹介

青年前期の子どもと親のためのFamily-basedがん啓発教育プログラム開発【看護学部】

わが国では2人に1人ががんに罹患しており、がんは国民の健康課題となっています。がんの発症には喫煙やウイルス、細菌、飲酒、食事などに起因することが判明しており、生活習慣の改善により予防できるがんもあります。そのため、がんに対して適切な知識をもつことは、がんの予防・早期発見につながり、がんの罹患率や死亡率の減少に寄与できるでしょう。しかし、日本のがん罹患率は増加の一途をたどる一方で、がん検診受診率や喫煙率は諸外国と比べると芳しくなく、がん対策として学校や社会でのがん教育の重要性が叫ばれてます。特に中学生以降から20歳代の青年前期(Adolescent and Young Adult:AYA)は、身体活動や健康的な食事などの健康に有益なライフスタイルと、飲酒や喫煙などの有害なライフスタイルが開始・確立される年代であり、がんの予防や教育的介入をするには適切な時期であるとされています。そのため、国外ではAYAを対象にさまざまながん啓発教育プログラムが開発され、その効果が検証されています。

そこで、我々は、がんに対する理解や予防行動の促進、がん検診受診率の向上をめざし、青年前期の子どもとその親が共に学び語り合えるFamily-based approachを応用したがん啓発教育プログラムを学際的な視点から開発し、評価することを目的として、2020年度から本プロジェクトに取り組んでいます。本プロジェクトは、がん看護や小児看護を専門とする研究者と臨床看護師、そしてがん専門医の研究者の計11名のメンバーで構成し、図に示した通りの計画で進めています。青年前期の子どもとその親のがん啓発教育プログラムを開発するために、①AYAを対象としたがん啓発教育等に関する文献レビュー、②青年前期の子どもやその親のがんに対する意識調査、③中学・高等学校の教員のがん教育に対する意識調査等を行い、これらの結果を基にがん啓発教育プログラムを開発します。そして、開発したがん啓発教育プログラムを評価するために、青年前期の子どもとその親を対象にこの教育プログラムを実施し、前後比較の介入研究で教育プログラムの効果や妥当性を評価する予定です。

がんの集団教育は以前からされており、がん予防や検診は個人が取り組むべき課題として教育されてきました。しかし、誰でもががんになりうる現代においてがん予防への取り組みは家族全体の課題であり、Family-based approachを応用したこのがん啓発教育を行うことにより、家族の健康的な生活の見直しができ家族単位での行動変容につなげることができると考えます。そして、家族の健康志向の高まりはもとより、家族を取り巻く地域社会への波及効果も期待でき、がんと共生できる社会づくりにも貢献できるでしょう。