活動事例紹介

2021.9.9

ひとりでも多くの方が享受できる治療法を目指して【関西BNCT共同医療センター】

がん治療で新しい領域を切り拓くBNCTの挑戦

2020年6月から、BNCT(※1)は切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんを対象に保険診療が開始されました。
頭頸部がんのうち手術のできないケースや放射線治療後に再発したケースなどにBNCTが適応とされ、施行されてきました。必ずしもこうしたケースの全てにBNCTによる治療ができるとはかぎりませんが、治療が困難であった頭頸部がんに対して、BNCTは効果的な治療法と考えられます。
BNCTは、ホウ素と中性子の小さな核反応によって成立する治療法であり、正常細胞への影響を抑えつつ、がん細胞を選択的に破壊します。BNCTの核反応はがん細胞内のみで起こるため、周囲の正常組織も含めて照射されるこれまでのX線治療と比較して副作用が少なく、極めて高い抗腫瘍効果を発揮します。
今まで治療を諦めざるを得なかった患者さんに対して、BNCTは一つの可能性を示しています。今後も臨床実績を積み重ねていく必要がありますが、原理的にもBNCTはこれまで治療が及ばなかった新しい領域のがんに挑戦できる治療法と期待されます。

※1 BNCT:Boron Neutron Capture Therapy(ホウ素中性子捕捉療法)の略

関西BNCT共同医療センター(外観)

再発高悪性度髄膜腫など脳腫瘍分野に挑戦するBNCT

脳腫瘍の中でも悪性神経膠腫は非常に予後の悪い腫瘍です。画像で捉えた範囲よりさらに広い範囲でがん細胞が少しずつ進展していきます。手術や放射線治療後に、残存したがん細胞が徐々に増大したり、または再発したりする可能性が高く、現在はこのような進行・再発悪性神経膠腫に対して確立された標準治療がありません。しかし、BNCTはこの悪性神経膠腫に対して治療効果があることが明らかであり、現在、開発企業(※2)による企業主導治験が終了し、承認申請に向けた手続きが進んでいます。
また、高悪性度髄膜腫においても、放射線治療などの標準治療後に再発した症例には治療方法がありませんが、このような非常に難易度の高い脳腫瘍領域にもBNCTは治療効果が期待されており、現在、関西BNCT共同医療センターでは当該腫瘍に対する医師主導治験に取り組んでいます。
このように、BNCTは既存の治療法では充分な成果が期待できない多くのがん領域に臨床研究や治験などを行って果敢に挑戦しています。

※2 開発企業:大阪医科薬科大学におけるBNCTの開発企業は、加速器BNCTは『住友重機械工業株式会社』、ホウ素薬剤は『ステラファーマ株式会社』となります。

治療当日の最終位置合わせ

産学協同による技術革新で高みを目指すBNCT

加速器BNCTとホウ素薬剤によるBNCTの治療は、まだ開始して間もない治療法であり、改良を進める点はいくつかあります。
例えば、中性子を発生させる加速器の機能及び投与するホウ素薬剤の臨床効果の向上に加えて、治療を受ける患者さんの安全性の向上や肉体的負担の軽減などが挙げられます。 こうした総合的な技術革新が進めばさらに治療の適応範囲が拡がって、治療時間の短縮や治癒率の飛躍的な向上につながり、これまで治療の叶わなかった患者さんへの大きな希望となります。
BNCTに関する科学的、臨床的な研究活動の継続は持続可能な社会を実現し、多くの人々に希望の光を灯すことができる大きな医療上の社会貢献活動であり、同時に医療に関する教育と技術革新の実践でもあることから、多くのSDGs目標の達成(目標:3,4,9,17)につながります。

加速器BNCT