活動事例紹介

感染対策室の学内外機関との連携活動
【医療総合管理部-医療安全管理部門-感染対策室】

感染対策室
大阪医科薬科大学感染対策室は、正しい手洗い、個人防護具の使用方法、適切な検査と抗生物質の使用など、感染対策に関する指導と情報の共有、講習会の開催や各種の広報手段を用いた周知徹底に加え、室員による現場でのアドバイスなど、院内感染の拡大防止に努めています。 また、抗菌薬や消毒用アルコールの使用量、検査件数、耐性菌検出数及び感染症の発症数などを調査し、その結果を次の感染対策に生かしています。


地域の行政や医療機関との連携
感染対策においては地域との連携活動が重要であるという考えから、現在「北摂四医師会感染対策ネットワーク」を組織しています。所轄保健所と連携し、地域の病院だけでなく精神科病院やクリニックも連携ネットワークに加えることで地域全体の感染対策のボトムアップに繋げています。 このネットワークにおいて当院は特定機能病院として率先垂範して行政や日本私立医科大学協会からの感染関連情報を伝達するとともに、相互評価や情報交換を通じて、知識や資源の不足しがちな中小病院やクリニックへの啓発や指導を行っています。 またサーベイランスにおいては「厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)」に加え、「感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)」への参加を呼びかけ、より機能的かつ効率的な調査を行うことで、感染対策のためのフィードバックができるよう地域の医療機関に働きかけを行っています。地域の医療機関での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの感染症集団発生に対するサポートだけでなく、各病院における耐性菌、抗菌薬使用量、手指消毒剤や個人防護具の使用量を調査し、当該結果をフィードバックすることで地域全体の感染対策のレベルアップに繋げています。 現在、高度薬剤耐性菌が市中から病院内に持ち込まれるようになり、従来の細菌学的検査法の限界がきています。そこでネットワーク内で検出された高度薬剤耐性菌の遺伝子学的な検討を実施し、所轄保健所と連携して対応しています。国が策定した「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」でも地域連携が必要と示され、当院の取り組みは先進的な取り組みであると感染対策関連の学会や日本私立医科大学協会の感染対策協議会等でも評価されています。


感染対策に係るクライシスマネジメントと将来の不測の事態に備えるリスクマネジメント
~新興・再興感染症への対応~

2009年の新型インフルエンザの世界的大流行後に、高槻市では「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく行動計画を策定し、対策として主要医療機関に帰国者・接触者外来の開設を依頼しました。また、2019年に本学にて将来の新型インフルエンザの発生に備えた机上シミュレーションを高槻市保健所と合同で本学で実施していた経験から、2020年新型コロナウイルス感染症の世界的発生時も三島医療圏では速やかに帰国者・接触者外来が複数開設され、円滑にPCR検査が実施さました。このことは、保健所からも高い評価を得ました。


新型コロナウイルス感染症について(COVID-19陽性妊婦対応)
2019年12月に中華人民共和国で発生し報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は瞬く間に世界に拡大し、世界保健機関は2020年1月に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。日本では2020年2月1日に指定感染症に指定され、3月下旬から患者数が増加、4月7日に改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき緊急事態宣言が発出されました。その後三密(密閉・密集・密接)回避、マスク装着、ワクチン接種の推奨および医療への様々なサポートが実施され、2023年5月以降は警戒レベルが2類から5類に変更されました。その間、本学では学長が「新型コロナウイルス感染拡大に伴う本学の基本方針」(現・新型コロナウイルス感染拡大防止のための基本方針)を定期的に発信し、当院では病院長を本部長とした「新型コロナウイルス感染症対策本部会議」を立ち上げて院内感染の発生を抑制しつつ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応を実施してきました。 臨床においては特定機能病院としての高度医療を行いながら、行政の要請に従い、外来診療に加え、重症入院患者の対応も並行して実施するという難しい舵取りが求められました。その中でも特筆すべき活動は陽性妊婦に対する対応です。大阪府の要請で当院産科が設置した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性妊婦専門病床にて200名の陽性妊婦を診療、内120件の分娩を行うとともに、86件の陽性妊婦の自然分娩を実施、妊婦及びその家族、さらには行政からも高い評価を受けました。


DICTとDMATによる連携活動
日本は自然災害の多い国であり地震や水害などが頻発し各地で避難所が開設されます。災害時に活動する災害派遣医療チーム(DMAT)の活動はよく知られていますが、東日本大震災の時に問題となったのは避難場所での感染対策でした。そこで日本環境感染学会では災害時感染制御支援チーム(DICT)を組織することとなり、ようやくDMATと連携して活動できる体制が構築されつつあります。当院の感染対策室のメンバー2名も講習を受けDICTメンバーとなっており、今後南海トラフ地震など大規模災害に備えた準備を始めています。


今後の活動展開
外来感染対策の向上に関しては新興・再興感染症と薬剤耐性菌がその課題とされています。グローバル化した現代社会では2009年にインフルエンザパンデミック発生からわずか10年で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックが発生しています。日本では2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)などマスギャザリングといわれる国際イベントが計画されており、インバウンドの拡大による、麻疹、結核、髄膜炎菌などの様々な感染症対策が必要とされています。当院では地域社会に貢献するため地域全体の感染対策の質の向上に努めて参ります。
当院では、医師が様々なメディアに出演し、正確な情報の発信を行って参りました。感染対策室長(浮村聡専門教授)は兵庫県立芸術文化センターでのイベント開催や一万人の第九の感染制御アドバイザーを務め、コロナ禍における芸術活動の安全な実施に貢献し、その成果を感染症関連の学会シンポジウム等で発表し評価されています。


【北摂四医師会 感染対策ネットワーク図(合計102施設) 2023年6月
北摂四医師会 感染対策ネットワーク