大阪医科薬科大学 サステナビリティ活動 2017
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58事例4事例5 核酸創薬は、低分子医薬並びに抗体医薬に次ぐ次世代の創薬技術として期待されています。従来の創薬は、膨大な数の化合物群から疾病の原因蛋白質(標的蛋白質)に結合して機能抑制する化合物(リード化合物)の探索と、リード化合物の製剤化に適した化合物への化学変換が必要でした。抗体医薬は、抗体の標的蛋白質に対する高い結合親和性を利用したものですが、非常に高価なため医療費を圧迫し皆保険制度を脅かす一因にもなっています。 一方、核酸医薬は、標的蛋白質をコードしているmRNAやDNAの塩基配列に選択的に結合し、その生合成を抑制する低分子核酸で、迅速かつ簡便な医薬設計が可能なため、技術革新により薬価を抑えた創薬が期待できますが、その幅広い臨床応用には生体内での安定性向上と、標的部位への選択的な送達(DDS)がになっています。私たちは、これらの問題に取り組み、核酸医薬の実用化に寄与できる基盤技術の開発を通じて社会に貢献していきたいと考えています。(大阪薬科大学 機能分子創製化学研究室 教授 浦田秀仁) 毎年、高い効果を示す医薬品が開発されています。しかしながら、全ての人において“期待通りの効果が得られ、問題となるような副作用は生じない医薬品”は実現できていません。健康を取り戻したいと願って服用した医薬品の副作用で、大変つらい思いをすることもあります。 平成25年度からは、新規に承認申請する医薬品についてリスク管理計画の策定が義務付けられ、厚生労働省の指導の下に医薬品ごとのリスク対策が整備されるようになりました。ただ、これは医薬品単位のリスク管理計画です。実際の治療においては、対象者の状況に応じて複数の薬剤が併用されるなど、医薬品単位のリスク管理では補えない部分があります。そのため、薬物療法を最も望ましいゴールに導くには、個々の事例においてベネフィットとリスクのバランスを適正に保つことが求められます。私たちは、薬物療法を受ける人の背景や状況を勘案した処方設計、治療開始後の経過観察、安全性・有効性の評価において必要とされる医薬品情報をデータベース研究等から構築しています。得られた情報を能動的に医療従事者、患者様に提供することで、適正な行動を促し、一人ひとりについて安全かつ効果的な薬物療法の実践に努めています。(大阪薬科大学 臨床薬学教育研究センター 教授 中村敏明)大阪薬科大学における「核酸創薬」医薬品情報の活用で適正な行動に導き、薬物療法の安全性並びに有効性を高める図1 適正な行動に導く医薬品情報の概要個別化されたリスク情報適正な行動に結び付く情報能動的情報提供リスクの明確化個別事例への適用最適化医師への情報提供データベース研究適正な行動医薬品リスク管理計画医師への情報提供供供

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